架空プロレス団体DESTINY

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タツ・マモルのプロレスコラム 第3回 DESTINY史の転換期-フィニッシャーvsリーガン戦-

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英雄なき後のDESTINYに衝撃が走った!!なんと、総合格闘技の強豪がやってきたのである。彼はDESTINYの選手達をなぎ倒し、さらには団体に対して「フェイク」と発言した・・・。

DESTINY最大のPPV「インフェニティ・ポッシブル」の対戦カードの中で、1番注目を集めた試合があった。それはセミファイナルに行われた、ザ・フィニッシャーvsニック・リーガンである。試合形式はノーDQマッチというルール無用の中で行われ、互いに武器を使わずとも激しい肉弾戦が繰り広げられた。通常、ノーDQマッチではプロレスを代表する凶器・イスなどが使用されるが、ここでは"ステゴロ"のためだけのノーDQであった。そしてその爪痕は凄まじく、直後に行われたメインイベント・DESTINY王座を賭けたファルコン(王者)vsシャックス戦では防護壁・実況席が破壊された状態で幕を開けたのだ。

当初、ファンはフィニッシャーvsリーガン戦を実質のメインイベントと捉えていた。もちろん、メインイベントのDESTINY王座戦も注目されていたはいたが、開催前の注目度だけで言えば、リーガン戦の方が圧倒的であった。それはDESTINYファン以外にも注目されたからである。

いざ蓋を開けてみれば、DESTINY王座戦はフィニッシャーvsリーガン戦と比べて、純粋なレスリングの攻防で組み立てられた名勝負となり、まさにメインイベント、トリを飾るに相応しい内容であった。

しかし、フィニッシャーvsリーガン戦はその注目以上に大きな役割を持っていたのだ。

衝撃的、圧倒的なリーガンのデビュー

ニック・リーガンは総合格闘技の強豪で、バックボーンはレスリングである。リーガンには根強いファンがいたが、総合から引退を宣言。同時にプロレス転向を表明して、DESTINYとスポット参戦で契約、殺伐とした雰囲気を漂わせながら、番組「BRAVE」で堂々のデビューを飾った。立ち位置はベビーでもヒールでもなく、相手が誰であろうとも戦いを挑む生粋のファイターという総合現役時代のままのキャラで、英雄なき後のDESTINYを焼け野原の状態にした。

そんなリーガンのフィニッシュ・ムーブはリーガンボムと三角締めである。

リーガンボムは通常のパワーボムの持ち上げ方とは違い、立っている相手の内股から自分の両手を回して一気に担ぎ上げるタイプである。通常のパワーボムに比べて強引な印象を受けるが、総合出身のリーガンとしては、試合中に三角絞めなどのカウンターとして出るバスター(パワーボム)に馴染みがあるからこそのチョイスであったのだ。

それからもう一つのフィニッシュ・ムーブの三角絞めは時折プロレスで見かけるが、まさしくThe・総合の技である。プロレスで繰り出された場合、相手がギブアップするか、しないかという選択の余地があり、それこそ試合中の重要な演出のひとつである。しかし、リーガンの場合は"プロレス的"ではない危険度、つまり瞬時に相手がギブアップしてしまうという、三角締め本来の威力を感じさせるものになっている。

必殺技以外にはタックル、パウンド、腕ひしぎ逆十字、キムラロック、ジャーマン、ベリー・トゥー・ベリー、オクラホマ・スタンピードなどを得意技とし、パワーと俊敏さでガンガン攻めてくるスタイルだ。リーガンは自分にとって馴染みのある技を使用しながらも、しっかりとプロレスにアジャストしていた。

リーガンはデビュー戦で、ディメンジョン・ジョーカーから圧倒的な勝利を収め、それから一度も敗れることなく、DESTINYの所属レスラーたちを破竹の勢いで薙ぎ倒していく。破ったレスラーはウェイストランド・キング、ウェズ、ザ・USA、ザ・ハードコア、カタストロフィー、アンダードッグ鬼塚などであった。

そんな連勝街道を直走るリーガンの前に1人の男が立ち塞がる。それは"あの事件"から復帰したばかりのザ・フィニッシャーであった。

最大級の抗争のはじまり〜イン・ドリーム・ロード・トーナメント〜

リーガンとフィニッシャーの抗争のきっかけは、「ドリーム・ロード・トーナメント」だった。

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このトーナメントの優勝者には「インフェニティ・ポッシブル」のメインイベントにて、団体の最高王座DESTINY王座に挑戦することができるという最大のチャンスが与えられる。

「ドリーム・ロード・トーナメント」は1回戦〜準決勝までが「BRAVE」で行われ、決勝戦がPPV「ドリーム・ロード」のメインイベントで行われる。その1回戦でリーガンとフィニッシャーがぶつかった。両者共に優勝候補とされたが、結果は両者リングアウト、引き分けとなった。ついにリーガンの連勝街道に一時停止がかかったのある。

ここで一旦、「ドリーム・ロード・トーナメント」に話題を移したい。

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トーナメント表をよく見ると、"巧妙"に仕組まれた並びとなっている。

結論から言うと、このトーナメントの優勝者はシャックスである。

シャックスは1回戦で、かつての抗争相手のポセイドンを難なく破ったものの、2回戦では優勝候補のリーガンとフィニッシャーとどちらかと当たることになっていた。しかし両者リングアウトによって2人とも敗退、シャックスは必然的に優勝候補と戦わずして、しれっと3回戦に駒を進める。もしリーガン、フィニッシャーのどちらかが2回戦に進出した場合、シャックスがこの2人に勝つ姿はあまり想像できない。これがミソなのだ。

それからシャックスは3回戦〜準決勝を突破し、決勝のエリック戦ではエンターテイナーの乱入の介あって優勝を果たしたのだ。また、エリックの1回戦の相手は敵対関係にあるエンターテイナーで、これが決勝戦乱入への"フリ"となっていた。

そんなリーガンとフィニッシャーが優勝候補とされていたのには強い根拠がある。

リーガンは連勝街道を直走り、そのままDESTINY王座戦に辿り着くのは時間の問題であるということだ。これは極めてシンプルながら説得力があるだろう。

一方、フィニッシャーは場合は"ハーキュリーズ・シュート事件"の負傷から復帰し、DESTINYの英雄なき今、トーナメントで優勝して王座に挑戦するのが、絶好のタイミングであるということだった。

つまり、シャックスは優勝候補の2人の陰に隠れた思わぬ伏兵であったのだ。もちろん、シャックスは元DESTINY王者であったのの、この時はあまり目立った活躍がなかったことが逆に効いてきたのである。

最大のチャンスを前に共倒れとなった、リーガンとフィニッシャーは何のテーマが無い状態で「インフェニティ・ポッシブル」を迎えてしまうことになるが、もちろん事前に"しっかりと"抗争が組まれた。トーナメントで引き分けたことに納得のいかないリーガンはフィニッシャーを挑発し、挑戦状を叩きつけるという形で抗争が幕を上げる。

リーガンはフィニッシャーを挑発する中で、シュート事件のことを引き合いに出しつつ、DESTINYに対して「フェイク」(フェイク発言事件)と発言する。

プロレス=DESTINYvs総合格闘技と「フェイク発言」

ここでハッキリしたのは、リーガンの立ち位置はあくまで外敵であるということ。総合から引退したものの、リーガンの纏う雰囲気は現役時代のままであるし、契約もスポット参戦という部分がそれを強く印象付ける。

もはや説明するまでないが、この抗争のテーマはプロレス=DESTINYvs総合格闘技の図式である。

リーガンとフィニッシャーは乱闘を繰り広げ、一触即発のまま、「インフェニティ・ポッシブル」を迎えた。

リーガンは入場コールにて、しれっとニックネームに"リアル・ファイター"と付け加えていた。

前述の通り、試合が始まるとノーDQ=ほぼノールールの状況下で激しい肉弾戦となった。もちろんリーガンは総合をベースにしたファイトで攻めるが、フィニッシャーも負けじと持ち前のパワーでなんとか対抗し、要所要所で有効打となる"プロレス技"を繰り出した。互いのスタイルは違えど、持ち味がしっかりと出ていたのである。

試合はフィニッシャーの勝利だった。決め手はいつもの必殺技フィニッシャー・バスターではなく、今まで一度も使ったことのなかった技、ギロチン・チョークだった。終盤、リーガンが必殺技のリーガンボムでフィニッシャーを持ち上げた瞬間、フィニッシャーはそのカウンターでギロチン・チョークを極めて、リーガンから失神KOを奪ったのである。まさに勝利への執念を感じさせる技であり、リーガンの首を捻じ切るような様相だった。

そう、フィニッシャーは総合からやってきた外敵リーガンから、プロレス=DESTINYを守ったのだ。

フィニッシャーは未だ最高王座であるDESTINY王座は獲得しておらず、好敵手といえる存在もいなかったものの、リーガンと抗争したことにより、その存在感を一気に強めた。予想通りトーナメントを優勝するよりも、リーガンと抗争が大きくプラスに働いたのである。"シュート"を仕掛けられ、なす術の無かったフィニッシャーの器量について疑問視する声もあったが、リーガンの"リアリティ"のある攻撃を食らい、さらには何度も投げられても(フィニッシャーの体重は123kg)耐え続けたフィニッシャーは改めてタフガイだとファンに知らしめた。

そして晴れてフィニッシャーはハーキュリーズの去ったDESTINY=団体の顔・主役となったのだ。

「フェイク発言」全文

リーガン「俺はここに来てから、さまざまなヤツらをブチのめしてきた。俺に敵うヤツなんて誰もいやしねぇ。だが、ついこの前に俺と戦ってブチのめされながらも、なんとか逃れられたヤツがいる。そいつはあくまでルールに助けられたにすぎねぇ。ここでハッキリさせてやる。DESTINYはフェイクだ。俺こそがホンモノだ。リアルなんだ。俺は世界中にDESTINYがフェイクだと暴いてきたんだ。そもそもヤツは前にケンカを仕掛けられて何も出来ず、ぶちのめされた野郎だ。そんなヤツにこの団体を引っ張っていく資格はあんのか?俺だったら、いつケンカを仕掛けられても返り討ちにしてやるぞ!おい、みんな気づいてんだろ?この団体を引っ張って行くべき人間はニセモノじゃない、ホンモノである俺だということを。」

物議を醸した「フェイク発言」。これにも重要な意図があった。

この発言についてリーガンはあるメディアのインタビューで、DESTINYから用意された"台本"であったと明かしている。

リーガンの参戦により、注目を浴びたDESTINYはさらになる注目を集めるため物議を醸す発言を用意したのだ。このご時世柄、誰かの失言・暴言というのは瞬く間に拡散され、炎上する。微かな火種は反発という自覚なき、ひとりひとりの油によって大火災に発展する。逆を言えば、火種を起こした者が宣伝の目的を持ってした場合、最も効率的な方法である。

火種=「フェイク発言」を外敵リーガンに言わせつつ、そのリーガンをフィニッシャーに倒させることで、DESTINYはフェイクのような世界観=一部から批判の対象となっているストーリーラインを堂々と行っていくと宣言したのである。しかも、DESTINYファン以外も注目しているタイミングでだ。

また、「インフェニティ・ポッシブル」はDESTINY最大のPPVだが、1年間のストーリーの節目である。つまりフィニッシャーが外敵を倒し、団体の主役となった瞬間、DESTINYの新章のメインストーリーがスタートしたのだ。その新章・第1話は「黒いフィニッシャー事件」=フィニッシャーのクローンで宿命のライバル、ブラック・フィニッシャーの登場である。

DESTINYのかつてのメインストーリーは英雄ハーキュリーズ率いる正義軍とシャックス属する悪魔軍団デビルズ・ゲートとの抗争であった。この超自然的世界観こそ、まさに一部からは批判されているストーリーラインであるが、ブラック・フィニッシャーの登場はそのストーリーラインを形を変えながらも受け継いでいるのだ。

リーガンは外敵の役割を演じながら、フィニッシャーを主役にするために最大のお膳立てをしたのだ。それはリーガンという"リアル・ファイター"だからこそ為せた、偉大なる貢献である。

ハーキュリーズの時代から、ザ・フィニッシャーの時代を迎えたDESTINY。現在リーガンはその姿を見せていないが、いずれまたやってくるだろう。その時いったい誰を標的にし、どんなファイトを見せるのか?注目である。

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